過失相殺とは、労働災害の被害者側が会社側に対して損害賠償請求を行う際に、被害者にも落ち度(過失)がある場合に、被害者の過失の比率分が、請求できる損害賠償額から控除されることを言います。

例えば、被害者側の損害額が2000万円であるとして、過失の比率が会社側80:被害者20であれば、請求できる損害賠償額は20%分を控除した1600万円に減額されるということです。
このような過失の比率のことを「過失割合」、過失割合による賠償額の減額のことを「過失相殺」と言います。

被害者に過失が認められるケースは様々ですが、一般的には、禁止されている作業方法で作業を行った場合、安全装置や保護具等を外して作業を行った場合、独自の判断で危険作業を行った場合などには、被害者の過失とされます。

しかし、被害者にも過失が認められる場合であっても、会社側にも相当の過失があるというケースが多々あります。
同じ現場で作業中の他の従業員のミスで労働災害が発生する場合もあるでしょうし、会社側において、例えば、安全装置の設置や保護具の着用に関する指示を行っていたか、安全な作業計画・作業手順を制定していたか、安全のための教育・周知徹底を行っていたかなどの点で、多くの過失が会社側にあることが少なくないのです。

労働災害の被害に遭われた場合に、ご自身にも過失があると考えて、会社側への損害賠償請求をためらう方も、中にはいらっしゃいます。
しかし、会社側にも相当の過失があり、会社側に対して相応の責任が問われるべきケースも多々あります。
また、被害者の方がお考えになる以上に、被害者の方の過失割合が小さく、会社側に重大な過失があるというケースも数多く存在します。

労働災害の被害に遭われた場合には、ご自身にも過失があるとお考えであったとしても、まずは労働災害と損害賠償に精通した弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

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