後遺障害とは

労働災害による負傷や疾病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもそれ以上の改善が期待できなくなったとき(症状固定)に、身体に残った障害を「後遺障害」と言います。
後遺障害には障害等級が定められており、障害等級に該当した場合、障害給付を受けることができます。

症状固定と診断されると、基本的には、症状の改善に向けた治療を続ける必要のない状態にあるということになります。
そのため、原則として、症状固定後の治療費については、労災保険などから支給されなくなります。

症状固定の時期は、基本的に主治医の判断によって決まります。
その際、主治医に診断名を記載してもらう必要がありますが、その記載内容次第で障害等級が変わる場合があることにご注意いただく必要があります。

後遺障害の等級が1つ異なるだけで、等級認定後の補償・賠償の額が大幅に変わります。
できるだけ多くの補償・賠償を受けるためには、適正な等級認定が求められます。
その際に頼りになるのが、労働災害に強い弁護士です。
労働災害に強い弁護士には、①後遺障害について、等級認定に向けてのサポートや、認定された後遺障害等級が正しいかどうかの判断を依頼することができますし、②より上位の後遺障害等級が狙えるときには審査請求や訴訟を任せることができます。

早い段階から後遺障害の等級認定のことを見据えて、できるだけ多くの補償・賠償を受けるためにも、労働災害に精通した弁護士にご相談されることをお勧めします。

障害(補償)年金と障害(補償)一時金

労働災害による傷病が治癒したものの、一定の障害が残った場合には、労災保険から、障害等級に応じて障害(補償)年金・障害特別年金、障害(補償)一時金・障害特別一時金が支給されます。
第1級~第7級の場合には給付基礎日額(労働災害の直前3か月間の平均給与日額)・算定基礎日額(労働災害の直前1年間の平均賞与日額)の313日~131日分の障害(補償)年金・障害特別年金、第8級~第14級の場合には給付基礎日額・算定基礎日額の503日~56日分の障害(補償)一時金・障害特別一時金が支給されます。
また、第1級の342万円~第14級の8万円と等級に応じて定められた金額の特別支給金が、一時金として支給されます。

障害(補償)年金・障害(補償)一時金の申請手続

業務中の労働災害で後遺障害が残った場合には、「障害補償給付支給請求書・障害特別支給金支給申請書・障害特別年金支給申請書・障害特別一時金支給申請書」(様式第10号)に必要事項を記載して、労働基準監督署に提出します(なお、通勤中の労働災害の場合には、様式第16号の7を提出します)。

提出に当たっては、①負傷または疾病が治った(症状固定に至った)こと・治った日・治った時の障害の状態に関する医師・歯科医師の診断書、②障害の状態を証明し得るレントゲン写真等の資料を添付する必要があります。

また、障害厚生年金・障害基礎年金等の支給を受けている場合は、その支給額を証明できる書類の添付も必要です。

労働災害に関する基礎知識についてはこちらもご覧下さい

●労働災害に関する基礎知識
●労働災害とは
●労災保険の申請手続
●労災申請の手続の流れ
●労働災害の被害に遭った時にかかるべき医療機関と制度の仕組み
●労働災害と後遺障害等級
●後遺障害が残った場合の補償について
●後遺障害等級を適正化するポイント
●労災保険の不支給決定に対する不服申立ての手続
●労働災害と損害賠償(労災保険の給付以外に受けられる補償)
●入院・通院時の損害賠償
●労働災害における慰謝料の請求
●休業中の補償について
●損害賠償金の計算方法
●過失相殺について