交通事故における労災保険の適用

業務中の交通事故または通勤中の交通事故の被害に遭った場合には、交通事故の加害者の自賠責保険・自動車保険のほかにも、労災保険の適用を受けることができます。

交通事故で労災保険を適用するメリット

特別支給金を受け取ることができる

労災保険を使用すれば、仕事を4日以上休んだ場合には、休業(補償)給付のほかに休業特別支給金が支給されます。
休業(補償)給付は給付基礎日額(※)の6割の金額、休業特別支給金が2割の金額となります。
よって、合わせて8割分の金額となります。

※給付基礎日額=事故が発生した日(賃金締切日が定められているときは、その直前の賃金締切日)の直前3か月間にその労働者に対して支払われた金額の総額を、その期間の歴日数で割った、1日当たりの賃金額。

一方で、自動車保険・自賠責保険からは、給付基礎日額の全額が休業損害として支給されます。
そして、自動車保険・自賠責保険からの休業損害の支払と、労災保険からの休業(補償)給付とを二重取りすることはできません。
そうすると、自動車保険・自賠責保険からの支給だけで十分にも思えますが、休業特別支給金は、自動車保険・自賠責保険から補償される休業損害とは別途受け取ることができます。
自動車保険・自賠責保険からの支給が先行している場合には、治療終了後に労災保険を忘れずに適用して、休業特別支給金を受け取るようにしましょう。

また、後遺障害の等級認定を受けた場合には、認定された等級に応じて、労災保険からは障害(補償)給付と障害特別支給金を受け取ることができます。
この障害特別支給金についても、休業特別支給金と同様に、自動車保険・自賠責保険からの補償とは別途支給を受けることが可能です。

さらに、自動車保険の保険会社が一方的に治療費や休業損害の支給を打ち切ってくることがありますが、そのような場合でも、労災保険に切り替えることで治療費や休業(補償)給付の支給が継続されることがあります。
また、加害者が自動車保険に加入していなかった場合には、自賠責保険の使用を先行させると、自賠責保険の傷害部分の上限支給額120万円を超過するおそれがありますので、治療が長期化して治療費が高額になるような場合には、休業損害などを受け取れなくなるおそれがあります。
このような場合には、労災保険の適用を受けるメリットが大きいと言えます。

治療費などについて過失相殺をされない

交通事故において被害者にも過失があった場合には、原則として、過失割合に応じた分の治療費などは、被害者が自分で負担するものとされます。
そうすると、治療費などの過失割合分の金額については、慰謝料などから控除されるため、最終的に被害者の手元に残る金額が減ってしまうことになります。
例えば、治療費が100万円で被害者の過失が2割の場合には、100万円×2割=20万円が慰謝料などから控除され、最終的に被害者が受領する金額が少なくなるのです。

しかしながら、労災保険を適用する場合には、「費目拘束」と言って、労災保険の給付の趣旨・目的と民事上の損害賠償とが一致する関係にあるものに限り、損害額から控除される扱いとされます。
つまり、上記の例で言えば、労災保険からの療養(補償)給付の趣旨・目的は、慰謝料などの損害賠償とは一致しないものであるため、100万円×2割=20万円を慰謝料などから控除することはできません。
したがって、慰謝料などを全額受け取ることができます。
このように、最終的に受領できる金額が増える可能性があるという点も、労災保険を適用するメリットであると言えます。

後遺障害の等級認定を労災保険が行う

交通事故によって後遺障害が残存した場合、自賠責保険の後遺障害の等級認定とは別に、労災保険でも後遺障害の等級認定を行います。

後遺障害等級の認定方法は、自賠責保険と労災保険とでは異なり、労災保険の場合には労働基準監督署での被害者面談も行われます。
労災保険で後遺障害の等級認定を受けた場合には、上記のとおり、認定された等級に応じて、障害(補償)給付と障害特別支給金を受け取ることができますが、障害特別支給金については、自賠責保険の給付とは別途受け取ることが可能です。

交通事故の加害者に対する損害賠償請求

交通事故について労災保険の適用を受けたとしても、被害者が被った損害の全てが補償されるわけではありません。
自賠責保険の適用を受けた場合であっても、同様です。
労災保険や自賠責保険で補償されない部分の損害については、加害者に対して損害賠償を請求していくことになります。
加害者が自動車保険に加入している場合には、保険会社を相手方として示談交渉をし、または訴訟による解決を図ることになります。

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