墜落・転落事故について

墜落・転落事故は、業務中の事故の中でも最も多く、重症化しやすいケースです。
労働災害による死亡者数は年々減少傾向にあるものの、例年、死亡者数の40%前後を墜落・転落事故が占めているという現状があります。

労災保険の申請でお困りのときは

労働災害の被害に遭われた場合に、会社、元請がすんなり労災保険の適用に応じてくれればよいのですが、労災申請に協力してもらえないこともあり得ます。

このような場合には、会社、元請に対して、「労災かくし」が違法行為であることを警告しながら、労災申請への協力を強く要求していくことが考えられます。
一方で、労災申請の手続は、必ずしも会社、元請にやってもらう必要があるわけではありません。

労働基準監督署に対し、会社、元請が労災申請に協力してくれなかった事情等を記載した書面を添付して、被害者側で申請を行うことも可能です。

もっとも、上記のような対応を被害者側がご自身で行うことは、大きな手間と時間、精神的負担を伴うものです。
弁護士のサポートのもとに対応されることをお勧めいたします。

会社、元請に対する損害賠償請求が可能なケースも

重篤な後遺障害を負うことや、お亡くなりになることが多いこの墜落・転落事故では、相応の補償(数百万円から数千万円)がなされるべきケースが少なくありません。

また、労働現場の管理責任について、「安全配慮義務違反」(労働者が安全で健康に働くことができるように配慮する義務=安全配慮義務に違反したこと)や「不法行為責任」(労働災害の発生が企業の組織、活動そのものを原因とするような場合や、労働現場の建物・設備に危険があった場合などに認められる責任)などを根拠として会社、元請に対して多額の損害賠償請求が認められるケースも多いのです。

しかしながら、このことを知らずに、労災保険からの給付のみを受け取って終わりとしてしまっている方が多いのもまた事実です。

墜落・転落事故が特に多いのは「建設業」

墜落・転落事故の中でも、特に建設や製造の現場で足場や梁、母屋、屋根等での作業中に落下し、亡くなってしまうという事故が多く、後を絶たちません。
全業種の中でも、建設業での死亡事故が33%と高い割合を占めています。

一例として、建設現場における事故の中でも最も多い「足場」からの墜落・転落による死亡事案の行動内訳(下図)を見てみると、すでに組み上がった足場上での作業中または移動中が56.8%と最も多く、続いて足場の組立てまたは解体作業中の35.4%ですが、いずれのケースにおいても、会社、元請に対する損害賠償請求が認められた例が多くあります。

建設業安全衛生年間事故

会社・元請に対して責任を追及するために

労働災害においては、様々な角度から「事故を起こさないために全力で被害者の安全に配慮したのか」という検証が行われます。
墜落・転落事故が発生したとなれば、例えば下記のような点で、会社・元請けの責任が追及されることになります。

・落下防止のための柵や帯など、十分な対策は施されていたか
・被害者の健康状態を把握していたか
・作業工程には時間的な無理がなかったか

しかしながら、会社側とのやり取りはとても煩雑で殺伐としたものであり、初めて労働災害の被害に遭われた方がそれを行うのは困難を極めますし、事故状況に関する資料の収集も容易ではありません。

ほとんどの方が労働災害の被害に遭うこと自体初めての経験ですから、ご自身では対応の仕方がよく分からないことが多く、どのように会社側との交渉を進めればよいか悩ましく、お忙しい中で非常にストレスに感じられることと思います。

また、会社側も「被害者(=あなた)が発生させた事故であり、会社側には責任がない」、「被害者に大きな落ち度(過失)があった」というように、「安全配慮義務違反がない」と会社側の責任を全否定してきたり、仮に会社側の責任を認めても「過失相殺」を根拠に損害賠償の大幅減額を主張してきたりすることが少なくありません。
そのような場合にも、弁護士はあなたの味方となり、適切な主張・立証を展開して争っていくことができます。

労働災害に精通した弁護士は、適正な損害賠償額や会社側との交渉の手法についても熟知しており、このような複雑なやり取りは手慣れていますから、ご依頼いただくことでこれらの手続を一挙に担い、スピーディーに解決まで進めていくことができます。
墜落・転落事故に遭われた方やご遺族の方は、労働災害に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

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●挟まれ事故・巻き込まれ事故
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