1 漁業における労働災害とは?

漁業は労働災害が非常に起こりやすい業種のひとつです。
特に危険なのが漁船における労働であり、悪天候や不安定な足場、機械の使用などにより様々な労働災害発生のリスクがあります。
統計にもよりますが、全業種と比較したときの労働災害発生率は3倍以上ともされています。
2 漁業でよくある労働災害トラブル
(1)転落・溺水事故
漁船からの転落・溺水事故は漁業特有の特に危険な労働災害です。
漁具の投入時などに転落・溺水事故が発生するリスクがあります。
ひとたびこれらの事故が発生すると救助が困難なケースもあり、海中転落者の死亡率は他の事故に比べて非常に高いものとなっています。
(2)漁具・機械による負傷
漁具・機械などに関する労働災害発生リスクがあるのも漁業の特徴です。
漁網やロープへの巻き込まれ、これらを巻き上げる際の機械への巻き込まれ、ベルトコンベアへの巻き込まれなど、様々な労働災害が発生する可能性があります。
(3)悪天候・荒波による事故
漁船はただでさえ足場が不安定であったり足元が滑ったりする環境にあります。
そのうえ、悪天候や荒波があると、重大な転倒・衝突事故等が発生する危険性があります。
(4)長時間労働・過労による疾病
遠洋漁業などの一部の業種では、過酷な長時間労働を要する場合もあります。
このような長時間労働が思わぬミスを生んだり、過労による疾病を生じさせたりするリスクがあります。
(5)低体温症・凍傷
同じく業種によっては、非常に寒い環境での長時間労働が行われる場合があります。
これによる低体温症や凍傷は重篤な被害につながりかねない重大な労働災害です。
3 漁業従事者(漁師・乗組員)でも補償は受給できる?
漁業従事者であっても労災保険による補償が受給できる場合が多いです。
漁業であっても多くの事業者には労災保険への加入義務があります。
一部の小規模な個人経営の水産業については、暫定任意適用事業として任意での加入とされていますが、水産庁により任意での加入が推進されているところであり、また、法改正により、将来的には強制加入となることが予定されています。
4 漁業現場での「労災隠し」や「泣き寝入り」に注意
労災事故が発生した際、使用者は、自己の責任が発生したり、労働基準監督署による調査が入ったりするのを避けるため、労災隠しをしようとしてくる場合があります。
具体的には、従業員に対して治療費は使用者が直接支払うとの提案や、労災保険に加入していないなどの虚偽の説明をして、労災給付を受けるのを阻止してくることが考えられます。
特に漁業現場では、調査によって漁に出られないようなことがあると使用者側の負担が大きく、労災の発覚を避けたがることがあり得るでしょう。
しかし、安易にこれを受け入れると、労災保険による適切な補償が受けられなくなる場合があります。
それどころか、後から労災事故を証明することが困難になり、補償が受けられないまま、これを覆すこともできず、泣き寝入りになってしまう可能性もあります。
そもそも労災隠しは犯罪であり、受け入れるべきものではありません。
使用者が労災保険に加入しているかという点も含めて、労災隠しには毅然とした対応が求められます。
5 漁業特有の保険制度:「労災保険」と「船員保険」の違い
漁業における労働災害については、労災保険のほか、漁業特有の保険制度である船員保険の適用があります。
船員保険は、船員という職種の特殊性に鑑み、独自の社会保険として設けられている制度で、通常の社会保険より手厚い保障がされている部分があります。
労働災害に関しては、かつては船員保険のみが対応していましたが、平成22年より労災保険と統合されており、現在は基本的には労災保険からの給付が行われます。
これに加えて、船員保険による補償が上回る場合には、船員保険から上乗せの給付が受けられることになります。
具体的には、労災給付に上乗せして、(労災保険では待機期間となっている)休業3日目までの休業手当金、船員保険による給付が労災保険による給付を上回る場合の休業特別支給金、死亡したときや後遺障害が残ったときの年金や特別給付金が受けられる可能性があります。
6 会社(船主・事業主)への損害賠償請求は可能?
労災保険及び船員保険で補償されるのはあくまで損害の一部であり、慰謝料など、これらでは補償されない損害もあります。
そのような損害については、会社(船主・事業主)への損害賠償請求を行うことが考えられます。
会社側で損害賠償義務を負うのは、会社側に安全配慮義務違反などの債務不履行や過失が認められる場合です。
そのため、会社側に一切の落ち度がなく、あくまで従業員の不注意のみによって労災事故が発生したのであれば請求が認められない場合もありますが、実際には、安全な体制を構築していなかったという点において、会社側の責任が認められる事例が多く存在します。
例えば、船舶事故を例に取ると、船舶を十分に整備していなかった、救命胴着を着用させていなかった、海難事故発生時の対応が不適切であったといった点で会社側の責任が認められています。
7 労働災害のお悩みは当事務所にご相談ください
労働災害は今後の生活に直結する重大な事態です。
特に、漁業に従事されている場合、重大な労働災害発生のリスクが大きく、そのような労働災害に遭われた場合には、今後の生活のための適切な補償を確保する必要があります。
そのため、労働災害発生時には、専門家である弁護士に相談のうえ、着実に対応していくことをお勧めいたします。
労働災害についてのお悩みは、まずは一度、当事務所までご相談いただければと存じます。
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