ご家族が労働災害でお亡くなりになった場合、ご遺族は労災保険から一定の保険給付を受けることができます。
しかし、労災保険の保険給付は、被害者側が被った損害のごく一部を補償するものに過ぎません。
会社側に不法行為責任や安全配慮義務違反、使用者責任が認められる場合には、会社側に対して、労災保険で填補されない部分の損害の賠償を請求することができます。

被害者のご遺族が会社側に対して請求できる損害賠償は、次の4つに分類することができます。

分類
項目
死亡するまでの怪我による損害 治療関係費、休業損害など
葬儀関係費 葬儀・法要の費用、仏壇・仏具購入費など
死亡逸失利益 被害者が生きていれば得られたはずの将来の収入
死亡慰謝料 被害者およびご遺族に対する慰謝料

葬儀関係費については、葬儀にかかった費用のほか、四十九日法要の費用は通常認められます。
仏壇・仏具購入費や墓碑建立費などが認められる場合もあります。
訴訟を提起した場合に認容される葬儀関係費の標準額は150万円ですが、150万円を下回る場合には実際に支出した金額とされます。

死亡慰謝料については、①亡くなられた被害者本人の慰謝料と、②ご遺族の慰謝料とがあります。
訴訟を提起した場合に認容される慰謝料の標準額は、以下の表のとおりです。

被害者
死亡慰謝料
一家の支柱 2800万円
母親・配偶者 2500万円
その他 2000万円
~2500万円

※上記は、被害者本人とご遺族の慰謝料の合計の標準額となります。
※事故状況が悪質な場合や、会社側が救助活動を怠った場合など、被害者の無念やご遺族の悲しみが通常よりも大きいと判断される場合には、上記の標準額よりも増額されることがあります。

死亡慰謝料については、労災保険からの補償がありません。
会社側に不法行為責任や安全配慮義務違反、使用者責任が認められる場合には、会社側に対して、慰謝料を含めて損害賠償請求を行うことができます。
労働災害でご家族を亡くされたご遺族の方は、労働災害に詳しい弁護士にご相談のうえ、損害賠償請求に関する助言を求めるのがよいでしょう。

会社側に対する損害賠償請求にあたっては、以上の各損害の合計額から、労災保険の給付などで填補された分を控除して、請求を行うこととなります。
ただし、労災保険からの給付のうち、休業特別支給金や障害特別支給金、将来の年金給付分は控除されません。

また、被害者側にも過失(落ち度)がある場合には、過失相殺と言って、被害者の過失割合分が、会社側に対して請求できる損害賠償金の額から差し引かれることとなります。

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