「高所での作業中に転落した。」
「プレス機での作業中に手を挟んだ。」
「切断機での作業中に指を切った。」
「機械・器具の使用に関する指導・説明や作業に関する研修・教育が十分に行われなかったために作業中に怪我をした。」

以上のように、自分ひとりで作業中に労働災害(労災)の被害に遭うケースがあります。
このようなケースでも、会社側に対して慰謝料などの損害賠償を請求できるケースが多々あります。

労働災害の被害に遭われた場合には、労災保険からの給付を受け取ることができます。
しかし、労災保険からの給付では、被害者が被った損害のうち、ごく一部しか補償されません。
労災保険からの給付では足りない部分の補償については、会社に対する損害賠償請求を検討しなければなりません。

ここで、労働災害の発生について、会社側に過失(落ち度)がある場合には、会社側に対して損害賠償を請求することができます。
労働災害の被害に遭われた場合には、被害者の方やご遺族の方の今後の生活に大きな影響が出てきます。
労災保険からの給付だけで終わらせるのではなく、会社側に対する慰謝料・損害賠償の請求について、しっかりとご検討いただくことをお勧めいたします。

自分ひとりで作業中に労働災害の被害に遭った場合には、会社側が被害者の不注意による事故であると切り捨て、慰謝料・損害賠償の支払を拒否する例が散見されます。
しかし、会社側は、労働者が生命や身体等の安全を確保することができるように、必要な配慮をする法的義務を負っています。
これを安全配慮義務と言いますが、労働災害が発生した場合には、会社側に安全配慮義務違反が認められるケースが多々あります。
そして、会社側に安全配慮義務違反が認められる場合には、被害者の側は会社側に対して慰謝料・損害賠償の請求を行うことができます。

会社側が負う安全配慮義務の程度としては、労働者の健康、人命の尊重の観点から、その時代にでき得る最高度の環境改善に努力することが必要であると考えられています。
労働安全衛生関係法令を遵守することはもちろん、法令を遵守してさえいれば足りるというものではなく、より広範囲の配慮をすることが必要であると考えられています。
安全配慮義務の具体的な内容としては、過去の裁判例から、次のように分類することができます。

【設備・作業環境】
①施設、機械設備の安全化あるいは作業環境の改善対策を講ずる義務
②安全な機械設備、原材料を選択する義務
③機械等に安全装置を設置する義務
④労働者に保護具を使用させる義務

【人的措置】
①安全監視人等を配置する義務
②安全衛生教育訓練を徹底する義務
③労働災害の被害者、健康を害している者等に対して治療を受けさせ、適切な健康管理、労務軽減を行い、必要に応じ、配置換えをする義務
④危険有害業務には有資格者、特別教育修了者等の適任の者を担当させる義務

会社側が上記のような安全配慮義務を十分に尽くしていれば、労働災害の発生を最低限に抑えることができます。
これを逆に言いますと、労働災害が発生した以上は、会社側に何らかの安全配慮義務違反が認められることが多いということなのです。
したがって、自分ひとりで作業中に労働災害の被害に遭ったケースでも、会社側に対して慰謝料などの損害賠償を請求できることが多々あります。

ここで、慰謝料・損害賠償を請求された会社側の対応として、被害者の不注意による事故であるから会社側には責任がないとか、被害者の不注意の程度が大きいから大幅な減額(過失相殺)が相当であるなどの主張が出されることが少なくありません。
しかし、会社側が一方的にそのような主張をしてきたとしても、法的な観点からすれば被害者の過失が認められないことや、被害者の過失よりも会社側の安全配慮義務違反の程度の方が圧倒的に大きいというケースも多いものです。
会社側から十分な金額の慰謝料・賠償請求を勝ち取ることができるケースが多々ありますので、会社側の言い分を鵜呑みにするのではなく、まずは労働災害に精通した弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

会社側に対して慰謝料などの損害賠償を請求する際には、安全配慮義務違反の特定および立証、請求すべき慰謝料・損害賠償の金額の算定、会社側から出される過失相殺などの反論を争っていくことなど、専門性が高くて複雑な対応が必要となります。
労働災害の問題に強い弁護士のサポートのもとに、会社側に対する慰謝料・損害賠償請求の示談交渉・裁判に対応していくのがよいでしょう。

当事務所の弁護士は、これまでに、労働災害と慰謝料・損害賠償に関するご相談・ご依頼を多数取り扱って参りました。
自分ひとりで作業中に労働災害の被害に遭われた方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。