弁護士木村哲也

「他の従業員がうっかり落とした物に当たった。」
「他の従業員が操作する重機・車両に激突された。」
「他の従業員が合図なく機械・重機を動かしたために怪我をした。」
「他の従業員の不注意な作業によって爆発や有毒ガスが発生した。」

以上のように、同じ現場で作業をしていた他の従業員の不注意によって労働災害(労災)の被害に遭われた場合には、会社側に対して慰謝料などの損害賠償を請求できるケースが多々あります。

労働災害の被害に遭われた場合には、労災保険の給付を受け取ることができます。しかし、労災保険では、被害者が被った損害のごく一部しか補償されません。労災保険の給付では足りない部分の補償については、会社に対する損害賠償請求を検討することとなります。

この点、労働災害の発生について、会社側に過失(落ち度)がある場合には、会社側に対する損害賠償請求が可能です。労働災害の被害に遭われた場合には、今後の生活に大きな影響が及ぶこととなります。そのため、労災保険の給付のみで終わりとするのではなく、会社側に対する慰謝料・損害賠償の請求をご検討いただければと存じます。

他の従業員のミスで労働災害の被害に遭った場合、加害者となった従業員は被害者が被った損害を賠償する義務を負います。これを不法行為責任(民法709条)と言います。不法行為責任が成立するためには、次の4つの要件を満たすことが必要です。

【不法行為責任の要件】
①加害者に故意または過失が存在すること
②被害者の権利を侵害したこと
③被害者に損害が発生したこと
④加害者の行為と被害者の損害との間に因果関係が存在すること

そして、不法行為責任を負う加害者本人だけではなく、加害者を雇用等している会社に対して、慰謝料などの損害賠償を請求できる場合があります。使用者責任(民法715条)が成立する場合です。使用者責任とは、従業員が業務の執行について被害者に損害を与えた場合に、従業員を雇用等で使用する会社が損害賠償責任を負うことです。使用者責任が成立するためには、次の3つの要件を満たすことが必要です。

【使用者責任の要件】
①加害者と会社との間に使用・費用の関係が存在すること
②被用者の行為について不法行為責任が成立すること
③被害者の損害が会社の事業の執行について加えられたものであること

同じ現場で作業をしていた他の従業員の不注意によって労働災害が発生した場合には、上記の使用者責任の要件を満たすのが通常です。したがって、労働災害の被害者は、使用者責任に基づき、会社に対して慰謝料・損害賠償を請求できるのが通常です。

これに対し、慰謝料などの損害賠償を請求された会社側の反応として、不法行為責任や使用者責任の成立を否認し、あるいは被害者側の過失(落ち度)を主張するなどして、スムーズに慰謝料・損害賠償の支払に応じてこないことが考えられます。また、慰謝料・損害賠償の支払による経済的負担を嫌って、不誠実な態度に終始する例なども散見されます。

労働災害の被害者の側としては、会社側に対する慰謝料・損害賠償の請求を行う際には、会社側の責任原因(過失)を的確に特定・立証し、会社側の主張に対する反論に備えていくことが必要です。また、請求する慰謝料・損害賠償の金額についても、正確に算定する必要があります。これらは、非常に専門的で複雑な検討事項であるため、労働災害に強い弁護士のサポートのもとに対応されることをお勧めいたします。

そして、仮に労働災害の発生について被害者の側にも過失があったとしても、会社側にも多くの過失が認められるケースが多いものです。会社側が被害者側の過失を主張してきたとしても、会社側の言い分を鵜呑みにするのではなく、まずは労働災害の問題に精通した弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。弁護士のサポートのもとに示談交渉や裁判を行うことで、適正な慰謝料・損害賠償を獲得できるケースが多々あります。

八戸シティ法律事務所では、これまでに、労働災害と慰謝料・損害賠償に関するご相談・ご依頼を多数お受けして参りました。他の従業員の不注意によって労働災害の被害に遭われた方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽に八戸シティ法律事務所にご相談ください。