1 腰の骨折事故が発生してしまうケース

労働災害による腰の骨折(腰椎圧迫骨折など)は、主に建設・運輸・製造業などの現場で、転落・転倒・重量物運搬といった「急激な外力」や「過度な負担」がかかった際に発生します。
発生パターンとしては、災害性の原因によるもの(突発的な事故)と、災害性の原因によらないもの(業務の蓄積によるもの)の大きく2つに分けられます。
災害性の原因による発生は、仕事中の突発的な出来事によって、急激な力が腰に作用することで負傷するケースです。
具体的には以下のような状況による負傷が挙げられます。
○重量物運搬中の転倒や滑落:重量物を運搬中に転倒したり、2人で運搬している最中に一方が滑って荷を外したりしたことで、急激な強い力が腰にかかる場合。
○予期せぬ負荷の作用:持ち上げる対象物が予想に反して著しく重かった(または軽かった)場合や、不適当な姿勢で重量物を持ち上げた際に、腰部に異常な力が作用する場合。
○不自然な動作:荷物を持ち運ぼうとした際につまずき、荷物を落とさないよう腰を不自然に捻るなどの動作により、強い異常な力が腰の筋肉や組織に作用する場合。
災害性の原因によらない発生は、腰に過度の負担がかかる業務に長期間従事することで、骨の変化や筋肉の疲労が生じ、負傷(腰椎疲労骨折や圧迫骨折)に至るケースです。
具体的には以下のような状況による負傷が挙げられます。
○骨の変化を原因とするもの:約30kg以上の重量物を労働時間の3分の1以上、あるいは約20kg以上の重量物を労働時間の半分以上に及んで取り扱う業務に、相当長期間(約10年以上)継続して従事した場合で、これにより生じた骨の変化が、通常の加齢による程度を明らかに超えると認められる場合。
○筋肉等の疲労を原因とするもの:約20kg以上の重量物を繰り返し中腰で取り扱う業務や、腰にとって極めて不自然な姿勢を保持する業務(配電工など)、長時間の同一姿勢(長距離トラックの運転など)、著しい振動を受ける作業などに、比較的短期間(約3か月以上)従事した場合。
労働災害による腰の骨折は、たとえ骨がくっついたとしても、「痛みが取れない」「腰を曲げることができない」「長時間立てない」といった後遺症が残ることも少なくありません。
2 腰の骨折事故による後遺障害について
労働災害による腰の骨折(特に腰椎圧迫骨折)では、脊柱の変形障害、脊柱の運動障害や慢性的な痛み(局部の神経症状)などの後遺障害が残りやすく、障害の程度に応じて6級から14級の後遺障害等級が認定される可能性があります。
【脊柱の変形障害】
| 第6級の4 | せき柱に著しい変形を残すもの |
| 第8級(準用) | せき柱に著しい変形を残すもの |
| 第11級の5 | せき柱に変形を残すもの |
【脊柱の運動障害】
| 第6級の4 | せき柱に著しい運動障害を残すもの |
| 第8級の2 | せき柱に運動障害を残すもの |
【局部の神経症状】
| 第12級の12 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
| 第14級の9 | 局部に神経症状を残すもの |
なお、考えられる後遺障害として、脊柱の荷重機能障害がありますが、この認定には、①原因が明らかに認められる(器質的所見がある)、②常に硬性補装具を必要とする、という2つの条件が必要となります。
そして、医学の進歩により、②常に硬性補装具を必要とする状態ということがほぼ考えられないことから、脊柱の荷重機能障害の認定例はほとんど存在しないと言われています。
3 腰の骨折事故が労災認定されるまでの流れ
腰の骨折事故が労災認定されるまでの一般的な流れは、治療を受け、必要書類を準備して労働基準監督署に提出し、調査・審査を待つという流れになります。
治療を受ける際、労災指定病院で受診すると、窓口での治療費支払いが不要になります。
指定病院以外で受診した場合は、一時的に自己負担した治療費を後で請求する手続が必要となります。
それから、補償の種類(療養補償、休業補償など)に応じた請求書(様式)を作成して、事業場を管轄する労働基準監督署に提出します。
労働基準監督署は、提出された書類に基づいて、事故の状況や業務との因果関係を調査します。
調査の結果、労災事故と認定されると、労災保険の給付が決定されて、給付が開始します。
その後、腰の骨折に対して治療を続けても症状が改善せず、脊柱の変形障害などが残った場合は、別途、後遺障害の等級認定を申請します。
まず、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、再度、労働基準監督署に障害補償給付の請求を行います。
そして、労働基準監督署が審査し、後遺障害の等級が決定されます。
4 腰の骨折が労災認定される条件とは?
腰の骨折が労災事故として認定されるには、骨折が「業務災害」または「通勤災害」のいずれかに該当し、労災事故と認定される必要があります。
具体的には、仕事中の事故であること(業務遂行性)と、業務に起因して負傷したこと(業務起因性)の両方が認められる必要があります。
業務遂行性とは、労働契約に基づいて事業主の管理下で業務を遂行していた際に発生した事故であることをいいます。
業務起因性とは、業務と負傷の間に因果関係があることで、業務に関連する作業中に起きた骨折は通常認められます。
労災認定される例は、以下のようなケースです。
○作業中に、転倒・墜落: 高所から落ちた場合。
○作業中に、重い荷物が腰に直撃した場合。
○作業で重いものを持ち上げた際に「ぎっくり腰」のようになり、検査で骨折が判明した場合。
○約20kg以上の重量物を繰り返し持ち上げる業務、長時間の立ち仕事や、不自然な姿勢を保持する業務(長距離運転など)に、約10年以上従事し、慢性的な負担が原因で骨の変化(変形または骨折)が起きた場合。
注意したいのは、椅子から立ち上がる、床の物を拾うなど、日常的な動作で発生した骨折は、たとえ勤務時間中に発生した骨折であっても、業務起因性(業務と負傷との間の因果関係)が認められにくい傾向にあることです。
5 腰の骨折事故によって会社に損害賠償請求をする場合
腰の骨折によって会社に損害賠償請求をするには、まず労災認定を受け、後遺障害が残った場合にはその後遺障害の等級認定も受け、労災保険から補償を受けることが前提です。
その上で、会社の安全配慮義務違反や注意義務違反(過失)が認められる場合に、労災保険では補填されない慰謝料(傷害慰謝料、後遺障害慰謝料)や逸失利益などを追加で請求できます。
傷害慰謝料は、基本的には入通院期間の長さに応じて算定されます。
後遺障害慰謝料は、認定された等級に基づいて決定されます。
裁判で認定されうる金額は、次のとおりです。
| 第6級の4 | 1180万円 |
| 第11級 | 420万円 |
| 第12級の12 | 290万円 |
| 第14級の9 | 110万円 |
安全配慮義務違反・注意義務違反とは、会社が労働者の安全を確保するために必要な措置を怠ることです。
会社の安全配慮義務違反・注意義務違反の例としては、以下のケースが挙げられます。
○高所作業において、墜落・転落防止のための安全帯(命綱)の支給や着用指示を怠っていた。
○転倒しやすい足場や整理整頓されていない危険な作業環境を放置していた。
○重量物を扱う作業において、複数人での作業を義務付けず、一人で腰に過度な負担がかかる作業をさせていた。
○適切な腰痛予防対策の指針(厚生労働省の通達)に従った安全体制を構築していなかった。
ここで、会社の義務違反を証明するためには、会社が負うべき義務とその違反の有無などを細かく検討する必要があり、法的な専門知識が必要です。
そして、適切な資料を集め、会社との交渉や法的な主張を効果的に行う必要もあります。
6 労働災害でお悩みの方は当事務所にご相談ください
ここまで、仕事中に腰・腰椎を骨折してしまった場合の労災認定と慰謝料について解説してきました。
一般的に、後遺障害の認定申請は、後遺障害の証明のための資料収集を含め困難を伴うこともありますが、弁護士にご依頼いただければ、適正な等級の認定に向けたサポートが可能です。
労災保険では補填されない慰謝料などを請求するために会社に損害賠償請求する段階では、会社の義務違反を証明する必要があり、一般の方にとっては難しいことが現実です。
法的な専門知識が必要ですし、適切な資料を集め、会社との交渉や法的な主張を効果的に行う必要がありますので、専門家である弁護士のサポートが必要といえます。
そのため、労働災害でお悩みの方は、お気軽に当事務所にご相談ください。
部位・症状別の労働災害についてはこちらもご覧下さい
●部位・症状別の労災事故
●仕事中に手の指を骨折した場合に労災認定はどうなる?弁護士が解説
●仕事中に手の指を切断した場合の労災認定はどうなる?弁護士が解説
●仕事中に腕を骨折してしまった場合の労災認定はどうなる?弁護士が解説
●仕事中に腕を切断してしまった場合の労災認定と慰謝料は?弁護士が解説
●仕事中に足を骨折してしまった場合の労災認定と損害賠償は?弁護士が解説
●仕事中に足を切断してしまった場合の労災認定と慰謝料は?弁護士が解説
●仕事中に腰・腰椎を骨折してしまった場合の労災認定と慰謝料は?弁護士が解説
●仕事中の熱中症は労災になる?労災申請と会社への損害賠償請求について弁護士が解説








