仕事中の事故で、足(脚、足首、足指)を骨折してしまうケースは少なくありません。
労働災害(労災)による足の骨折は、重傷事故として、治療に長期間を要するだけでなく、関節の可動域制限や慢性的な神経症状など、後遺障害が残る可能性が高いという特徴があります。
足の骨折による後遺障害は、職種によっては労働能力に直結するため、復職が難しくなる、あるいは退職を余儀なくされるといった深刻な事態にもなりかねません。
このことから、労災保険や会社からの補償がより重要となってきます。

ここでは、仕事中に足を骨折してしまった場合の労災認定とともに、会社への損害賠償の請求について、弁護士が詳しく解説いたします。

1 足の骨折が発生するケース

仕事中に足を骨折してしまうケースは、以下の5つのパターンに大別されます。
これらはもちろん、業務上の負傷として労災認定の対象となり得ます。

(1)墜落・転落による衝撃

高所や段差からの落下により、着地時の衝撃で足を骨折してしまうケースです。
建築現場・高所作業では、足場や屋根、はしごからの墜落により、大腿骨や脛骨(すね)・腓骨を粉砕骨折する事例があります。
荷役作業では、トラックの荷台や脚立から足を踏み外し、転落して骨折する事例があります。

(2)転倒

作業中のつまずきや滑りによって足を骨折してしまうケースです。
床が濡れて滑りやすい、通路に物が置いてある、段差があるといった場所での転倒が原因となります。
また、滑り止めが不十分な靴や、作業内容に適さない靴での作業が転倒のリスクを高めることになります。

(3)重量物の落下・激突

重い物が足の上に落ちる、あるいは物が足に強く当たって骨折してしまうケースです。
鋼管や工具、荷物が落下し、足の甲(足背部)や足指を骨折することがあります。
さらに、壁の倒壊や資材の荷崩れにより、足が下敷きになる重大な事故もあります。

(4)はさまれ・巻き込まれ

機械や車両に足が巻き込まれて骨折してしまうケースです。
フォークリフトに足を轢かれる、あるいは車両との接触により下肢を骨折・開放骨折する事例があります。
また、コンベアや可動部のある機械に足を挟まれ、圧挫骨折(押しつぶされる骨折)を起こす事例もあります。

(5)疲労骨折(繰り返しの負担)

事故による突発的な骨折だけでなく、業務上の動作が原因となる場合もあります。
長時間の立ち仕事や歩行、重量物の反復運搬など、特定の部位に繰り返し力が加わることで発生します。
仕事との因果関係(業務起因性)が認められれば、労災認定の可能性があります。

2 足の骨折による後遺障害について

労災で足を骨折した際、治療後も残った症状は「後遺障害」として認定される可能性があります。
足の骨折による後遺障害は、主に以下の4つに分類されます。
以下では、脚、足首の骨折による後遺障害を解説しております。

機能障害
(可動域制限)
膝や足首などの関節が骨折前のように動かなくなった状態。
健側の可動域と比較して制限の程度(1/2以下、3/4以下など)により等級が決まります。
〇8級:下肢の3大関節のうち1関節の用を廃したもの
〇10級:下肢の3大関節のうち1関節の機能に著しい障害を残すもの(可動域が健常側の2分の1以下)
〇12級:下肢の3大関節のうち1関節の機能に障害を残すもの(可動域が健常側の4分の3以下)
変形障害 骨折した部位が正しくくっつかず、骨が曲がったまま癒合したり、関節の形状が変わったりした状態。
〇7級:1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの(大腿骨や脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの)
〇8級:1下肢に偽関節を残すもの(大腿骨や脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもの)
〇12級:長管骨に変形を残すもの(大腿骨や脛骨に変形を残し、外部から想見できる程度(15度以上屈曲して不正ゆ合したもの)以上のもの、など)
短縮障害 骨折の影響で、受傷した側の足が健側(健康な側)に比べて短くなった状態。
1cm以上、3cm以上、5cm以上といった短縮の長さによって等級が分かれます。
〇8級:1下肢を5cm以上短縮したもの
〇10級:1下肢を3cm以上短縮したもの
〇13級:1下肢を1cm以上短縮したもの
神経障害 骨折部位やその周辺に痛み(しびれ)が残る状態。
MRIなどの画像で医学的に証明できる場合は12級、自覚症状のみの場合は14級が検討されます。

3 足の骨折事故が労災認定されるまでの流れ

労災で足の骨折事故が発生し、労災として認定・支給されるまでの一般的な流れは以下の通りです。

①事故発生と会社への報告

事故が発生したら、直ちに会社に報告します。
医療機関の受診においては、可能な限り「労災指定医療機関」を受診するのがよいでしょう。
受付で労災であることを伝えると、原則として窓口での自己負担なし(0円)で受診できます。

②労災保険の請求(書類作成と提出)

療養給付(治療費)や休業給付など、請求する給付内容に応じて書類を作成し、労働基準監督署長に提出します。
原則として本人が提出しますが、多くの場合は会社が手続きを代行します。
また、会社が拒否する場合でも、本人が直接提出することが可能です。

③労働基準監督署による調査

請求書類が受理されると、労働基準監督署が必要な調査を行います。
調査では、事故が業務中に起きたか(業務遂行性)、業務が原因で起きたか(業務起因性)が精査されます。

④認定と給付の決定

調査の結果、労災と認められれば支給決定がなされます。
申請書類が受理されてから決定までの期間は、概ね1か月~3か月程度です。
ただし、内容が複雑な場合は、それ以上の期間を要することもあります。
支給決定の連絡は、「支給決定通知書」が郵送され、指定の口座に労災保険金が振り込まれます。

⑤その後の手続き(症状固定時など)

治療を続けても足に関節の可動域制限や変形などの後遺症が残った場合(症状固定)、障害等級の認定を受けることで給付が受けられます。
障害補償給付請求書を提出し、以下のような資料を添えて認定を求めます。
・医師作成の後遺障害診断書
・X線やMRIなどの画像所見
・関節可動域測定結果(日本整形外科学会基準等)
・日常生活動作の制限状況に関する書面

4 足の骨折が労災認定される条件とは?

足の骨折が労災として認定されるためには、主に「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの条件を満たす必要があります。

業務遂行性とは、労働契約に基づき、事業主の指揮命令下(支配下)にある状態で発生したことという条件です。
認められる例としては、作業中の事故、待機中の事故、事業場内での休憩中における設備の不備による事故があります。
認められない例としては、私的な用事中の事故、休憩中の私的な行動による怪我があります。

業務起因性とは、業務と負傷の間に因果関係があることを指します。
要するに仕事が原因で負傷したのかということです。
認められる例としては、荷物の落下による足指の骨折、高所作業中の転落、床が濡れていたことによる滑倒があります。
認められない例としては、個人的な持病(てんかん等)による転倒骨折、喧嘩など業務と無関係な行為による骨折があります。

特殊なケースの認定条件として、疲労骨折では、特定の事故(転倒など)がなくても、業務で同じ部位に過度な負担が繰り返し加わったことが医学的に証明されれば、労災認定される可能性があります。

5 足の骨折による会社に対する損害賠償請求

労災で足の骨折をした場合、労災保険で治療費や休業補償が受けられますが、労災保険ではカバーされない慰謝料(入通院慰謝料や後遺障害慰謝料)、休業損害や逸失利益の不足分は、会社の安全配慮義務違反(または不法行為)が認められれば会社に請求できます。

請求できるのは、会社が安全対策を怠り、それが原因で骨折した場合です。

請求できる主な損害は以下のとおりです。

休業損害 労災の休業補償を超えて、不足する賃金部分。
入通院慰謝料 骨折による入院・通院で精神的苦痛を受けたことへの補償。
後遺障害慰謝料 症状固定後に足に後遺障害(可動域制限、痛みなど)が残った場合、その等級に応じて請求。
逸失利益 後遺障害により将来得られたはずの収入(賃金)が減る場合の補償。

ここでは、会社が安全配慮義務(危険防止措置)を怠ったことが事故原因であると証明する必要があります。
たとえば、墜落防止措置(安全帯の未設置)、保護具の不支給、フォークリフトの運転資格者の不在、危険箇所の放置、危険作業への注意喚起の欠如などが認められれば、会社側の過失が認定されます。

会社が責任を認めない場合や、請求額が大きくなる場合は、早めに労災問題に強い弁護士に相談し、具体的な対応を検討するとよいでしょう。

6 労働災害でお悩みの方は弁護士にご相談ください

後遺障害認定で適切な等級の認定を受ける、会社と交渉して適正な金額の損害賠償を獲得するなど、専門知識が必要な場面では、弁護士のサポートは不可欠といえます。
足の骨折は後遺障害が残りやすく、請求額も高額になる傾向があるため、労災及び損害賠償請求の専門家である弁護士のサポートが非常に重要になります。
労災の申請、後遺障害認定の手続から会社への損害賠償請求まで、漏れなく適切に対応を行うことで初めて、適正な補償を受けることができます。

労災による足の骨折事故に遭いお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。

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